政治資金収支報告書には政党交付金の使途も含まれる
政治資金収支報告書の公的な保存期間は3年しかないので、それより前のものを主権者は見ることができなくなります。それゆえ、公表している期間に閲覧するだけでは不十分で、入手し保存する必要があります。そこで、これまで政治資金収支報告書と政治資金の支出の領収書の入手について解説してきました。
国会議員関係政治団体の「1万円以下の領収書」(少額領収書)の写しを入手する方法
以上に対しては、政党交付金の使途を知りたいから、むしろ、そちらを先に解説してほしいと思われる方もおられるでしょう。政党交付金は税金が原資ですから、納税者国民としては、政党助成法に基づく「政党交付金使途等報告書」(以下、「等」を省略し「政党交付金使途報告書」と表記します)を優先して解説してほしいと思われるのは当然のことです。
ただ、政治資金資金収支報告書等を優先して紹介し解説してきたのには、次のような理由があります。
第一に、政治資金収支報告書は、政治資金の収入と支出について一定の基準で個々具体的に記載したものですが、その場合の政治資金には、政党交付金が含まれているのです。言い換えれば、政党交付金使途報告書だけ見ても、全体がわからないので、どうしても政党交付金の使途報告を含んでいる政治資金収支報告書に注目してしまうのです。
第二の理由としては、支出の透明度について、例えば国会議員関係政治団体の政治資金収支報告と政党交付金使途報告を比べると、国会議員関係政治団体の政治資金収支報告書では原則として「1万円を超える支出」(「人件費」を除く)が記載されていますが、政党交付金使途報告書では原則として「5万円以上の支出」(人件費と光熱水費を除く)しか記載されていないので、どうしても透明度の高い政治資金収支報告書に注目してしまうのです。
第三は、後述するように、政治資金収支報告書に比べると、政党交付金使途報告書の入手には時間と費用が掛かってしまうことです。
政党交付金使途報告書の入手方法
政治資金収支報告書には政党交付金の使途を含めて政治資金の収支が記載されているとはいえ、政治資金収支報告書を見ても、政治資金の収入のうち政党交付金の金額はわかっても、政治資金の支出のうち政党交付金が幾らで、どの記載の分が政党交付金なのか(政治資金の支出の記載の中のどの支出が政党交付金なのか)はわからないので、やはり政党交付金使途報告書を入手する必要があることには変わりません。
政党交付金使途報告書の保存期間は「5年」で、政治資金収支報告書の保存期間は「3年」です。ということは、政党交付金使途報告書の方が政治資金収支報告書よりも情報公開としては優れていることになります。
総務省のホームページでは、総務大臣に提出された政治資金収支報告書と政党交付金使途報告書がインターネット公表されています(下記をクリックするとご覧いただけます)。
既に解説したように、政治資金収支報告書の提出先の点でいえば、総務大臣に提出する政治団体と都道府県選挙管理委員会に提出する政治団体があり、前者は上記のHPに、後者は各都道府県選挙管理委員会のHPに、それぞれアクセスすれば見ることができますが、インターネット公表してない選挙管理委員会がいまだに少数ながら存在します(兵庫県、広島県、福岡県など)ので、政党本部の政治資金収支報告書は総務省のHPにアクセスし、政党支部の政治資金収支報告書は各都道府県選挙管理委員会のHPにアクセスすれば、それぞれ見ることができますが、インターネット公表していない県選挙管理委員会に提出された政治資金収支報告書は情報公開請求しないとみることができないのです。
一方、政党交付金使途報告書は、政党の本部分も、支部分も、上記総務省のHPで公表しているので、それを見るだけであれば、簡単にアクセスしてみることができます。
ところが、上記総務省のHPで公表している政治資金収支報告書は、インターネットを使ってアクセスすれば、閲覧するだけではなく、印刷もできますし、例えば自分のパソコンにPDFのまま取り込んで入手することもできますが、政党交付金使途報告書は、閲覧することはできるものの、印刷することも自分のパソコンに取り込むこともできません(取り込んでも文字は見えません。ただし、画像として保存することは可能なようですが、とても面倒です)。
これは、政党助成法が「閲覧」だけしか明記していないから、というのがその理由だそうです。かつて私は総務省の担当者に問い合わせしたところ、「職員が印刷等ができないように作業をする」旨の説明を受けました。優秀な職員を無駄な作業に使っていることになりますので、法律改正が必要です。
法律改正がいまだに行われていない中、政党交付金使途報告書を入手しようと思うと、情報公開請求するしかないことになりますが、時間と費用がかかることになりますので、公益財団法人「政治資金センター」では、政党交付金使途報告書の入手を断念しているのが現状です。
政党本部の政党交付金使途報告書を入手したいときには、その本部の届け出のされている総務大臣(総務省)に対し情報公開法(行政機関の保有する情報の公開に関する法律)に基づき情報公開請求すると、その後、手数料の支払いの手続きを経て、その政党交付金使途報告書の開示を受けられます。
政党支部の政党交付金使途報告書を入手したいときには、その支部の届け出のされている都道府県の選挙管理委員会に対し地方自治体の情報公開条例に基づき情報公開請求し、その後、手数料の支払いの手続きを経て、政党交付金使途報告書の開示を受けられます。総務大臣(総務省)に対し情報公開法に基づき情報公開請求することもできますがその場合には開示決定まで原則30日なので、それよりも短い期間で開示決定される都道府県の選挙管理委員会に請求した方が開示が早いでしょう。
もちろん、政党交付金の明細の記載されている各支出(「人件費」と「光熱水費」を除く)については、「領収書の写し」の情報公開請求もできます(政党支部で国会議員関係政治団体の政治資金の場合、「領収書の写し」の請求できる支出は「人件費」を除く支出です。政党本部は国会議員関係政治団ではないので、その政治資金の支出の「領収書の写し」を情報公開請求できるのは「政治活動費」の支出の明細の記載があるものだけです)。
以上。