【「桜を見る会前夜祭」事件】「安倍晋三後援会」の裏金収入は2016年~2018年で計約593万円か(2013年と2014年も裏金収入の可能性あり)

はじめに

 政治資金収支報告書(収支報告書)について、実際の収支報告書の収支の内容を分析するとして、「桜を見る会前夜祭」の収支不記載を例に「安倍晋三後援会」(後援会)という政治団体の2018年分の収支報告書を分析し、2018年「桜を見る会前夜祭」前払い時の「後援会」の裏金収入は約205万円だったのではないかと指摘しました

では、それよりも前は、どうだったのでしょうか?

「後援会」の205年分から2017年分の収支報告書を分析してみましょう。

なお、すでに2018年分の分析の時に説明しましたが、「後援会」の収支報告書を見ると、支出日の不明なものがあるので、「試算」するしかありません。支出日の不明な支出については、「前夜祭」の前払い前にはなされていないと仮定して、言い換えれば、「後援会」の残金ができるだけ多くなるように仮定して試算します。

(1)前夜祭」についての基本情報と、経費総額、会費収入額、補填額

 まず、2013年から2019年までの「前夜祭」(懇親会)についての基本情報の確認です。

これまでの「前夜祭」(懇親会・夕食会)

開催年月日名称会場
2013年4月19日安倍晋三後援会の懇親会ANAインターコンチネンタルホテル東京(宴会場)
2014年4月11日安倍晋三桜を見る会懇親会ANAインターコンチネンタルホテル東京(宴会場「プロミネンス」)
2015年4月17日安倍晋三後援会桜を見る会前夜祭ホテルニューオータニ(宴会場「鳳凰の間」)
2016年4月 8日桜を見る会安倍晋三後援会懇親会ANAインターコンチネンタルホテル東京(宴会場「ギャラクシー」)
2017年4月14日安倍晋三後援会桜を見る会前夜祭ホテルニューオータニ(宴会場「鳳凰の間」)
2018年4月20日安倍晋三後援会桜を見る会前夜祭ホテルニューオータニ(宴会場「鳳凰の間」)
2019年4月12日安倍晋三後援会桜を見る会前夜祭ホテルニューオータニ(宴会場「鶴の間」)

次に、「前夜祭」の毎年の収支に相当する「費用総額」(支出額)、「会費」(収入額)、「安倍氏側の補塡額」(不足額)について、「安倍氏側、『桜を見る会』夕食会に5年で916万円負担」朝日新聞(2020年11月25日 5時00分)で確認しておきましょう。

費用総額会費安倍氏側の補塡額
2015427万円270万円157万円
2016407万円229万円177万円
2017427万円241万円186万円
2018448万円304万円145万円
2019634万円384万円251万円
合計2343万円1428万円916万円

すでに指摘したように、実際の参加者数と会費支払者数が同じとは限らないので、ご注意ください。

(2)「後援会」は2017年の前払い(同年3月13日頃)時の残額は多くても約196万円しかなかった!

 前述の朝日新聞の記事によると、2017年は費用総額が427万円、会費収入が241万円、安倍氏側の補填額が186万円とあります。

 ここでは、この報道された金額が真実だと仮定します。

 以下では、「後援会」の2017年分の収支報告書における収支を分析する視点は、2017年「前夜祭」は同年4月14日に開催されており、その1か月前に、「後援会」はどれだけの政治資金を保有していたのか、というです。

 より具体的に言えば、ホテルは大きな宴会については開催1か月前に見積額を主催者に支払ってもらうようにしているので、前述の費用総額427万円は「前夜祭」開催後に最終調整した金額の可能性があるものの、ここでは、開催1か月前に前払いした見積額だと仮定したうえで、「後援会」が「ホテル」側に見積額の前払い(2017年3月13日頃)時に経費総額計427万円の政治資金を保有していたのか、ということです。

 「後援会」の2017年分収支報告書(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350405/2017.pdf)によると、

 その事前支払い時までの「後援会」の収入合計額は多く見積もっても1470万円弱でした(下記の一覧を参照)。その主たる収入は、「前年からの繰越額」約724万円のほか、「新春の集い」収入約702万円などです。

 一方、「後援会」の前払い時までの支出合計額は、少なくとも1272万円余りでした(下記の一覧を参照)。

となると、その時点での残額は196万円くらいしかないことになります。

「前夜祭」前払い(2017年3月13日頃)時までの「安倍晋三後援会」の収支の概要

前払い時までの収入前払い時までの支出残金
2017年1469万1719円1272万5982円196万5737円

 「前夜祭」開催1か月前の2017年3月13日ごろ、収支報告書上の残額は196万円くらいしかないのに、「後援会」が「ホテル」に対し計427万円を支払ったとなると、2017年分収支報告書に記載されていない裏金収入が少なくとも計約231万円あった計算になります。

(3)「後援会」は2016年の前払い(同年3月7日頃)時の残額は多くても約250万円しかなかった!

 前述の朝日新聞の記事によると、2016年は費用総額が407万円、会費収入が229円、安倍氏側の補填額が177万円とあります。

 ここでは、この報道された金額が真実だと仮定します。

 以下では、「後援会」の2016年分の収支報告書における収支を分析する視点は、ホテルは大きな宴会については開催1か月前に見積額を主催者に支払ってもらうようにしているので、前述の費用総額407万円は「前夜祭」開催後に最終調整した金額の可能性があるものの、ここでは、開催1か月前に前払いした見積額だと仮定したうえで、「後援会」が「ホテル」側に見積額の前払い(2016年3月7日頃)時に経費総額計407万円の政治資金を保有していたのか、ということです。

 「後援会」の2016年分収支報告書(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350405/2016.pdf)によると、

 その事前支払い時までの「後援会」の収入合計額は多く見積もっても1618万円弱でした(下記の一覧を参照)。その主たる収入は、「前年からの繰越額」約869万円のほか、「新春の集い」収入728万円などです。

 一方、「後援会」の前払い時までの支出合計額は、少なくとも1367万円余りでした(下記の一覧を参照)。

となると、その時点での残額は250万円くらいしかないことになります。

「前夜祭」前払い(2016年3月7日頃)時までの「安倍晋三後援会」の収支の概要(支出を幾つかまとめて表記)

前払い時までの収入前払い時までの支出残金
2016年1617万9462円1367万3689円250万5773円

「前夜祭」開催1か月前の2016年3月7日ごろ、収支報告書上の残額は250万円くらいしかないのに、「後援会」が「ホテル」に対し計407万円を支払ったとなると、2016年分収支報告書に記載されていない裏金収入が少なくとも計約157万円あった計算になります。

(4)2016年~2018年「前夜祭」に係る「後援会」の裏金収入は計約593万円

2015年の「前夜祭」は、同年4月17日に開催されており、その1か月前は3月16日頃でありますが、

「後援会」の2015年分収支報告書(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350405/2015.pdf)によると、その頃までの支出額は20万円しかないので、前掲の朝日新聞の「関係者」の話通りであれば、427万円の前払いは可能であったことになります。

 以上の分析によると、

2016年約157万円、2017年約231万円、2018年約205万円、合計約593万円。

(5)2013年と204年も裏金収入の可能性あり

2013年と2014年については、朝日新聞では具体的な金額が報じられていませんが、

2013年の収支報告書(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350405/2013.pdf

と2014年の収支報告書(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350405/2014.pdf

によると、「前夜祭」開催1か月前の時点(2013年4月18日、2014年3月10日)での残金は2013年は194・8万円、2014年は190・3万円程度だったので、裏金収入がなければ見積額の前払いは不可能であったと推察されます。

前払い時までの収入前払い時までの支出残金
2013年451万6613円256万8105円194万8508円
2014年1482万0254円1291万7531円190万2723円

 2013年と2014年については、政治資金規正法違反(不記載罪)は公訴時効となっているので、報道されていないのかもしれませんが、犯罪を始まった初期の事実関係は動機を知る上でも重要です。両年についても、「費用総額」(支出額)、「会費」(収入額)、「安倍氏側の補塡額」(不足額)の報道がなされることを期待しましょう。

 安倍前首相は以上の裏金収入疑惑についても説明責任を果たす必要があります。

                                以上。

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