菅総理が昨2020年9月自民党総裁選で官房機密費を使った疑惑

昨日、「菅義偉総理の官房長官時代の内閣官房報償費(機密費)の使途文書を公表します」の投稿を行いました。

そこでは、私たち政治資金オンブズマンが内閣官房報償費(機密費)の情報公開訴訟を提起し、2018年に最高裁で一部勝訴したことを紹介するとともに、2018年以降昨2020年9月までの内閣官房報償費の開示を受けた使途文書を公表しました。

「内閣官房報償費の根本的見直し要求書」(2018年3月20日)を無視

実は、最高裁判決後に、私たち原告団・弁護団は、開示された使途文書を分析し、当時の安倍晋三内閣の菅義偉官房長官に対し内閣官房報償費の抜本的見直し要求書を作成して送付したのです。

その一部を紹介しましょう。

要求の第一は「政策推進費の支払い」についての要求で、違法な支出であっても事後的にも何の検証もできないんであれば政策推進費は闇金になってしまうので、政策推進費の管理実態を改めないのであれば、直ちに廃止すべきであるという要求です。

そして、仮に存続するのであれば「内閣官房報償費の執行にあたっての基本的な方針」を策定し、「日本国の国会議員(与野党を問わない)及び公務員(国家公務員及び地方公務員)に対する政策推進費の支払を廃止する旨の定めをする」ことを要求しました。「国会議員や公務員らからの情報収集や政府の政策への合意・協力に対して内閣官房長官がカネを払う」ことは、情報提供・政府の政策に賛成・協力してもらうための買収に他ならず、場合によっては違法であり、また、民主主義国家ではあってはならないことであるからです。また、「外国人や民間人に対しての政策推進費の支払い」は、内閣官房長官の判断で支払いすることまで禁止はしませんが、「民間人であっても、評論家やマスコミ関係者への支払い」は、世論を「誤導」する危険性があるので禁止すべきである、と要求したのです。

第二の要求は「政策推進費の支出の情報公開の拡大」です。最高裁判決どおり「政策推進費受払簿」等は公開することに加え、「政策推進費の支出内容については、官房長官が、目的、相手方、金額、支出日を記帳する」ことにし、「秘匿性の程度」によって5年、10年、25年後に、公開を行うこととする旨を「基本的な方針」に定めることを要求しました。

※以上の他の要求を含め要求書の詳細については、上脇博之『内閣官房長官の裏金 機密費の扉をこじ開けた4183日の闘い』(日本機関紙出版センター・2018年)で紹介していますので、興味のある方はご一読ください。

以上の要求は、財政法が公金の目的外支出を禁止していますし、日本国憲法は政府に予算の執行について説明責任を課しているんで、法的に問題はありません。また、法律で行う必要はなく、内閣官房長官の判断で内規を作成すれば簡単にできることです。

しかし、安倍総理も菅官房長官も、全く応答しませんでした。おそらく、これまで目的外支出を行ってきており、そのような違法支出を続けたかったからはないかと思えてなりません。

菅官房長官は自民党総裁選で官房報償費を使ったのではないか!?

 昨日の投稿では、2018年以降昨2020年9月までの内閣官房報償費の開示を受けた使途文書を公表しました。ここでは、昨年8月~9月16日までのものに限定して再度紹介します(リンクを貼っていますので、クリックしてご覧ください)。

2020年8月1日から同月27日まで

2020年8月28日から9月11日まで

2020年9月12日から同月16日まで

以上の開示文書を見ると、以下のことがわかります。

①2020年8月に内閣官房報償費は9507万円余りが支出され、

そのうち、8月3日8430万円が領収書不要の「政策推進費」として菅官房長官に支払われた。

②菅官房長官は8月21日会計課長に5000万円を2回請求、つまり、計1億円を請求し、9月1日、その1億円のうち、9020万円を「政策推進費」として処理し、

その9020万円のうち、9月16日までに4820万円を使い、4200万円を残した。

以上のことに加え、以下の事実を確認しておきましょう。

①安倍総理は、8月28日夕に「総理を辞任する」と表明した。

②自民党総裁選に立候補する意向を固めた菅義偉官房長官は、8月31日、最大派閥・細田派を率いる細田博之元幹事長、参院自民党や竹下派(54人)に強い影響力を持つ青木幹雄元参院会長と会談し、青木氏に「安倍政権の路線を継承する」と述べ、党総裁選への立候補を表明し、9月2日の記者会見でも「安倍総裁が全身全霊をかけてすすめてこられた取り組みをしっかり継承し、さらに前に進めるために私の持てる力をすべて尽くす覚悟だ」と述べた。

③9月14日、菅官房長官は自民党総裁選挙で新総裁に選出され、9月16日新総理に指名・任命された。

以上の事実によると、菅官房長官は8月には8月3日に支払いを受けた8430万円を使いし、細田博之元幹事長や青木幹雄元参院会長と会談した翌日(9月1日)に9020万円を「政策推進費」とし、総理に指名・任命された9月16日までに4820万円を使っていたのです。

となると、菅官房長官は安倍総理が辞任を表明して以降自民党総裁選挙をめぐって「政策推進費」1億3250万円(8430万円+4820万円)の一部(8430万円を安倍総理辞任表明までに使い切っていたら4820万円の一部)を自己の当選のために違法支出したのではないかとの疑惑が生じます。菅官房長官は自民党総裁選挙に大きな時間を費やしている時期なのに、同選挙のない時期と同じ程度の金額を支出していたのは、あまりにも不自然です。

菅官房長官が前述した「内閣官房報償費の執行にあたっての基本的な方針」を策定し、国会議員やマスコミ関係者らに支出することを禁止し将来使途を公表することを国民に約束していたら、そのような疑惑が生じる余地はないかもしれませんが、そのような「基本的な方針」を策定していない以上、当然生じる疑惑です。

菅総理は、この疑惑を否定するのであれば、その疑惑を払拭するための説明を真摯に行う責任があります。

                                    以上。

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