政治資金収支報告書の入手方法と「政治資金センター」

はじめに

 政治資金については、過去に政治や選挙を歪めてきた様々な事件が発覚してきましたので、国民主権主義・議会制民主主義の点からも、「知る権利」という基本的人権の保障の点からも、その情報を公表・公開する制度が不可欠です。

 政党を含む政治団体の政治資金については、その収入と支出(収支)を報告させることが制度化されています。

 それら報告書を入手しようとすると、情報公開請求しなければならないものと、あえてその請求をしなくても入手できるものとがあります。

 

(1)情報公開請求しても開示を受けられない問題

 政治団体(政党を含む)の政治資金については、政治資金規正法という法律があり、同法は「政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため」の法律です。

 同法に基づき政治団体は、毎年、1月1日から12月31日までの政治資金の収支について政治資金収支報告書(収支報告書)に記載して、総務大臣または都道府県選挙管理委員会(都道府県選管)に提出することが義務づけられています(第12条、第19条の10)。

 政治団体の種類に応じて、その提出期限は、翌年の3月末まで、あるいは5月末まで、と定められています。

 しかし、その提出された直後の収支報告書については、情報公開請求しても、その開示を受けられません。

 同法には、収支報告書の要旨の公表を「11月30日までに」なされなければならないとの定めがあり(第20条)、情報公開請求がなされても「要旨が公表される日前は」情報公開法の開示の「決定を行わない」との定めがある(第20条の3第1項・第3項)ため、要旨が公表されるまでは、国民は情報公開請求しても開示決定と開示を受けられないのです。

 これは議会制民主主義の点からも「知る権利」の保障の点からも問題です。収支報告書が提出されたら公文書になりますから情報公開請求がなされれば当然開示されるよう法律改正する必要があります。

 

(2)政治資金収支報告書の要旨公表後

 では、収支報告書の要旨公表後はどうでしょうか?

 前述したとおり、入手したい収支報告書を情報公開請求すれば開示を受けられますが、実は、情報公開請求しなくても入手できる方法があるのです。

 まず、「総務大臣」に提出された収支報告書については、総務省のHPでインターネット公表(ネット公表)されているので、あえて情報公開請求しなくてもインターネットが使用できれば入手できるのです(https://www.soumu.go.jp/senkyo/seiji_s/seijishikin/)。

 2019年の収支報告書については、まだ公表されてはいません。今月末までに(おそらく今週中に)公表されることでしょう。

 各自パソコンでアクセスすれば、各収支報告書をパソコンやメモリーなどに取り込むこともできますし、印刷することも可能です。過去3年分がネット公表されています。解散した政治団体の収支報告書も、提出期限後に遅れて提出された収支報告書もネット公表されるので入手できます(以上については、ネット公表している都道府県選管への提出された収支報告書も同様です)。

 では次に、各「都道府県選管」に提出された収支報告書を入手する方法ですが、ほとんどの都道府県選管では、総務省と同じように情報公開請求しなくてもインターネットが使用できれば入手できるのです。

 例えば、東京都選管(https://www.senkyo.metro.tokyo.lg.jp/organization/shuushihoukoku-syokan_this_is_branch/)。

 東京都選管は、すでに2019年分の収支報告書をインターネット公表しています(https://www.senkyo.metro.tokyo.lg.jp/organization/shuushihoukoku-syokan_this_is_branch/shikin20201117/)。

 大阪府選管(http://www.pref.osaka.lg.jp/senkan/syuushikouhyou/)。

 大阪府選管は今月末までに2019年分をインターネット公表することでしょう。

 

(3)インターネット公表していない県選挙管理委員会

 ところが、一部の県選管に提出された収支報告書については、当該県選管が収支報告書をネット公表していないので、情報公開請求しなければ入手できません。

 私が知りえた情報によると、2018年の夏の時点では、11の選管がネット公表していませんでした。その後、以上のうちからもネット公表する選管があり、今月(2020年11月)末の時点でネット公表しない県選管は、広島、新潟、石川、福井、兵庫、福岡の6県だけになりそうです(「収支報告書のネット公開、要旨だけ 広島など6県【決別 金権政治】」中国新聞2020/11/15)。

 「6県だけ」と書きましたが、例えば、2019年の参議院通常選挙で大勢の地方議員・市長らを含む有権者を買収した罪で起訴され刑事裁判中の河井克行衆議院議員・案里参議院議員の収支報告書は広島県選管に提出されていますが、残念ながら県選管はインターネット公表していませんので、情報公開請求しなければ各収支報告書を入手できないのは大問題です。

 ですから、いまだに「6県も」ネット公表していないのは議会制民主主義の観点でも知る権利の保障の点でも決して軽視できないのです。

 

(4)過去3年分では公表期間が短すぎます

 前述したように、総務省もほとんどの都道府県選管も過去3年分の収支報告書をネット公表しています(ただし、昨年11月から、あるいは今年11月から、それぞれネット公表し始めた選管では、2年分、あるいは1年分だけ)。

 しかし、それより前の収支報告書については、原則として、ネット公表されていませんし、情報公開請求しても入手できません。

 政治資金規正法を改正して公表期間をもっと長くすべきです。参議院議員の任期は6年ですから、最低でもその期間の収支報告書をネットで公表し続けるべきです。

 

(5)「政治資金センター」が過去の収支報告書を公表

 実は、過去3年分だけではなく、その前の分の収支報告書を入手する方法があります。それは、公益財団法人「政治資金センター」のHPにアクセスすることです(https://www.openpolitics.or.jp/)。

例えば、衆議院議員の収支報告書をまとめたページ(https://www.openpolitics.or.jp/search/area.php)、

参議院議員の収支報告書をまとめたページ(https://www.openpolitics.or.jp/search/area.php?house=sangiin

などがあります。

 そこでは、過去の収支報告書を国会議員ごとにネット公表しているので、国会議員がどのような政治団体を有しているのかわからない方にとっては、とても便利です。

 2019年分については、収支報告書の入手とアップ作業に一定の日数を要しますが、2018年分までの過去数年分の収支報告書は、今でもアクセスすれば入手可能です。

 例えば、「桜を見る会前夜祭」の収支を収支報告書に記載していなかったことが再度問題になっている安倍晋三前首相の政党支部と主要な政治団体の各収支報告書については、2011年分から2018年分まで公表しています(https://www.openpolitics.or.jp/search/search-result.php?cid=35040)。

 したがって、「政治資金センター」で入手できる収支報告書は、情報公開請求しなくても、また総務省や各都道府県選管の公表ページにアクセスしなくても良いのです(もっとも、政治資金収支報告書をネット公表後に訂正する政治団体の分については、総務省や都道府県選管の公表ページにアクセスして訂正内容を確認する必要があります)。

 「政治資金センター」は皆さんの寄附で経費を賄っています。寄附が集まらないと存続が難しくなるので、一人でも多くの方々が寄附をして支援していただくことで、国会議員らの政治資金を監視することが継続可能になることでしょう。

 「政治資金センター」への寄附のお願い(https://www.openpolitics.or.jp/support_Donation.html)。

以上。

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