【「桜を見る会前夜祭」事件】2018年前払い時の「安倍晋三後援会」の裏金収入は約205万円か

はじめに

 政治資金収支報告書(収支報告書)の入手方法について書きました。ここでは、実際の収支報告書の収支の内容を分析した結果を紹介します。

それは、「安倍晋三後援会」(後援会)という政治団体の2018年分の収支報告書の分析結果です。

(1)「後援会」の政治資金規正法違反(不記載罪)と公職選挙法違反は確定か

 「後援会」主催の2018年「桜を見る会前夜祭」(前夜祭)事件につき、今年5月に弁護士・法律家662名(その後8月6日に第2次告発。告発人は計941名)が政治資金規正法違反(収支の不記載罪)及び公職選挙法違反(選挙区内の者への寄附罪)容疑で刑事告発するために東京地検特捜部に告発状を提出しています。

この点は、参加者数が不明である2013年~2017年「前夜祭」事件についても同様に違法だったことが指摘できます。ただし公訴時効のものがあります(詳細については、上脇博之『忘れない、許さない! 安倍政権の事件・疑惑の総決算とその終焉』(かもがわ出版・2020年)を参照ください)。

 少し説明しましょう。

 例えば、2018年は、ホテルニューオータニ東京(以下「ホテル」)で前夜祭が開催され、ホテルには支払いがなされているはずであり、そのとき「ホテル」の宴会代金が最低でも一人1万1000円なのに、「前夜祭」参加費を一人5000円しか徴収していなければ、「安倍晋三後援会」は一人につき6000円を後援会参加者に寄附したことになります。

「後援会」は以上の収支を収支報告書に記載していません。2013年から2017年も同じです。2019年分の収支報告書は近日公表なので、公表後に確認できます。

安倍氏側は補填を含め基本的な事実関係を認めたようなので、政治資金規正法違反(収支の不記載罪)及び公職選挙法違反(選挙区内の者への寄附罪)は確実のようです。

(2)ホテルも公選法違反の可能性が生じる

 ただし、ホテルが大幅な割引をしている可能性が生じています。

 今朝の朝日新聞「安倍氏側、『桜を見る会』夕食会に5年で916万円負担」の記事によると、例えば、2019年の「前夜祭」の場合、費用総額が634万円、会費収入が384万円、安倍氏側の補填額が251万円とあります。

 これによると、参加費一人5000円だと会費を支払ったのが768人になりますが、安倍氏は、これまで約800人と説明していました(これは少なめの数字)ので、会費を支払っていない者が約32名になります。おそらく毎年会費を支払っていない者が何名かいたのでしょう。

 費用総額が634万円だと、一人1万1000円で単純計算すると、577人分になりますので、ホテル側が大幅割引している可能性が高いです。この割引が首相(または国会議員)特別割引だとなると、ホテルは政党には寄付できますが政治団体には寄付できませんので、違法な企業献金をしたことになります(ただし、安倍事務所が参加者を少なめにホテルに伝えている可能性もありますので、今後の報道を待ちましょう)。

 以上のことを意識しながら、2018年分について政治資金収支報告書を分析しましょう。

(3)「後援会」は見積額の前払い(2018年3月19日頃)時に448万円の政治資金を保有していたのか?

 前述の朝日新聞「安倍氏側、『桜を見る会』夕食会に5年で916万円負担」の記事によると、2018年は費用総額が448万円、会費収入が304万円、安倍氏側の補填額が145万円とあります。

 ここでは、この報道された金額が真実だと仮定します。

 以下では、「後援会」の2018年分の収支報告書における収支を分析する視点は、2018年「前夜祭」は同年4月20日に開催されており、その1か月前に、「後援会」はどれだけの政治資金を保有していたのか、というです。

 より具体的に言えば、ホテルは大きな宴会については開催1か月前に見積額を主催者に支払ってもらうようにしているので、前述の費用総額448万円は「前夜祭」開催後に最終調整した金額の可能性があるものの、ここでは、開催1か月前に前払いした見積額だと仮定したうえで、「後援会」が「ホテル」側に見積額の前払い(2018年3月19日頃)時に経費総額計448万円の政治資金を保有していたのか、ということです。

 ただ、「後援会」の2018年分収支報告書を見ると、支出日の不明なものがあるので、「試算」するしかありません。支出日の不明な支出については、「前夜祭」の前払い前にはなされていないと仮定して、言い換えれば、「後援会」に有利になるよう残金ができるだけ多くなるように仮定して試算します。

(4)前払い(2018年3月19日頃)時の残額は多くても約243万円しかなかった!

 「後援会」の2018年分収支報告書(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350405/2018.pdf)によると、

 その事前支払い時までの「後援会」の収入合計額は多く見積もっても1553万円弱でした(下記の一覧を参照)。その主たる収入は、「前年からの繰越額」約777万円のほか、「新春の集い」収入約744万円などです。

 一方、「後援会」の前払い時までの支出合計額は、少なくとも1309万円余り(大会費など)でした(下記の一覧を参照)。

となると、その時点での残額は243万円くらいしかないことになります。

「前夜祭」前払い(2018年3月19日頃)時までの「安倍晋三後援会」の収支の概要(支出を幾つかまとめて表記)

収入

金額(円)

年月日

支出

金額(円)

年月日

前年からの繰越額

7,773,479

2018.1.1

会合料理代小計

244,800

2018.2.19

平成30年新春の集い

7,440,000

Jタクシー代

172,220

2018.1.24

会合費

135,000

大会費小計

1,755,097

2018.1.5~16

その他

179,514

会場費一式

1,875,000

2018.1.16

収入合計

15,527,993

 

会場料理一式

4,000,000

2018.1.16

 

 

 

会場費小計

2,685,892

2018.1.16~23

 

 

 

会場、料理一式

1,656,016

2018.1.23

 

 

 

大会費小計

707,615

2018.1.25~2.27

黒字

2,431,353

 

支出合計

13,096,640

 

 「前夜祭」開催1か月前の2018年3月19日ごろ、収支報告書上の残額は243万円くらいしかないのに、「後援会」が「ホテル」に対し計448万円を支払ったとなると、2018年分収支報告書に記載されていない裏金収入が少なくとも計約205万円あった計算になります。

 安倍前首相はこの裏金収入疑惑についても説明責任を果たす必要があります。

以上。

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