アベノマスクを例に情報公開請求のやり方を解説しましょう

上脇博之

 情報公開請求のやり方について、アベノマスクを例に、私が相談を受けたとの想定で解説します。

はじめに

 Aさんは、新聞やテレビ等のマスメディアの報道で、安倍晋三内閣総理大臣が布製マスク(いわゆるアベノマスク)を全世帯2枚、妊婦、介護施設、小中高等に配布することを発表したことを知りました。

 しかし、そのマスク1枚の単価が幾らなのかなど詳細については報道されませんでしたし、厚生労働省と文部科学省のホームページ(HP)を見ても、それらの情報は書かれてはいませんでした。Aさんは、それらの情報を知りたいと思いました。

 

1.情報公開制度について知ろう

(1)総務省の「情報公開制度の紹介」と冊子

 そこで、それを知る方法があるのか学校の先生に質問したところ、国(政府)の行政機関(または独立行政法人等)に情報公開を請求する方法があると教えてもらいました。

 Aさんは、早速インターネットを使って検索して調べたところ、総務省が情報公開制度について解説しているペイジを発見しました(総務省「情報公開制度の紹介」(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/gyoukan/kanri/jyohokokai/shoukai.html)。

 そこには、情報公開制度についてイラストつきで、とても分かり易く解説した冊子「情報公開制度 教えてペンゾー先生!」も公表されていました(https://www.soumu.go.jp/main_content/000476660.pdf)。

 その冊子を読んで、一応、理論的には理解できました。

 しかし、いざ、情報公開を実践しようと取り掛かったところ、例えば、前掲の冊子7枚目に紹介されている「行政文書開示請求書」を実際どうやって入手したらいいのか等、具体的なことがわからず、困ってしまいました。そこでAさんは、私に相談しました。私は以下のように助言しました。

 

(2)情報公開請求するための「開示請求書様式」を入手しよう

 確かに「行政文書開示請求書」を作成するためには、その「様式」を入手する必要があります。

 前掲の総務省「情報公開制度の紹介」のペイジには、「開示請求書様式」(word , pdf)が公表されているので、それをクリックしてダウンロードすると入手できます。

Word版の「開示請求書様式」(https://www.soumu.go.jp/main_content/000411538.docx

Pdf版の「開示請求書様式」(https://www.soumu.go.jp/main_content/000411540.pdf

以上の総務省の公表しているものとは別に各省庁などの各行政機関が公表しているものもあります。例えば、厚生労働省のHPには、情報公開のペイジがあり(https://www.mhlw.go.jp/shinsei_boshu/jouhoukoukai/

https://www.mhlw.go.jp/jouhou/koukai.html

Word版の「開示請求書様式」(https://www.mhlw.go.jp/jouhou/koukai05/dl/01.doc

Pdf版の「開示請求書様式」(https://www.mhlw.go.jp/jouhou/koukai05/dl/01.pdf

他の省庁などの各機関のHPでも「様式」は公表しています。

ただし、特許庁の場合は、後述するように開示手数料の支払いは収入印紙ではないので、以下の書式をご利用ください。

Word版の「開示請求書様式」(https://www.jpo.go.jp/news/kokai/jpo-jouhou/document/index/kaijiseikyusyo.docx

Pdf版の「開示請求書様式」(https://www.jpo.go.jp/news/kokai/jpo-jouhou/document/index/kaijiseikyusyo.pdf

(ア)以上のいずれかを印刷して必要事項を手書きする方法もありますし、(イ)Word版の「開示請求書様式」をパソコンに取り込んで必要事項をそのWord版「開示請求書様式」に入力して「行政文書開示請求書」を完成させから印刷する方法もあります。

 いずれの様式も、パソコンに保存しておくと、いつでも上記(ア)または(イ)の方法で「行政文書開示請求書」を作成できますので、「様式」((イ)の場合は初めから氏名と住所を入力しておく)の保存をお勧めします

 

2.実際に情報公開請求しよう

(1)「開示請求書様式」に必要事項を記入(入力)し収入印紙を貼る

「開示請求書様式」に書き込む(入力する)必要のある事項は以下です。

(あ)Aさんがこの開示請求書を作成した「年月日」。「年」については、元号ではなく西暦でも構いません(Word版を取り込んで入力する際には「令和」を削除して西暦で書き込むことができます)。

(い)Aさんの「氏名

(う)Aさんが「請求する行政文書の名称等」。これについては、この後、詳しく解説します。

(え)Aさんが「求める開示の実施の方法等」。

当該機関の事務所(窓口)で開示を受ける場合には、「ア 事務所における開示の実施を希望する。」に〇を付けたうえで、その事務所で行政文書を見るだけなら「閲覧」に〇をつけ、行政文書の写しの交付を受けるのなら「写しの交付」に〇を受けます。

行政文書の写しを受け取りに行かず、送付してほしい場合には、「イ 写しの送付を希望する。」に〇を付けます。

(お)特許庁以外については、開示請求手数料として収入印紙300円を貼り付けます(ただし、後述するようにオンラインによる場合は300円ではなく200円です)。現金を同封してはいけません。収入印紙は、Aさんの最寄りの郵便局などで300円の収入印紙を購入し、指定の欄にその収入印紙を貼り付けてください。

ただし、特許庁の場合は、(ア)情報公開窓口における現金での支払いとなります。収入印紙は使用できません。(イ)郵送する場合には、納付書による振込みになるので、それを証明する「納付書・領収証書」を添えて請求しないといけません。事前に特許庁の情報公開窓口に問い合わせ(あるいは相談)し「納付書・領収証書」を入手しなければなりません

 

(2)「請求する行政文書の名称等」を記載する

 上記の「行政文書開示請求書」の記載(記入)において、とても重要になるのが「請求する行政文書の名称等」の記載(記入)です。その特定が不十分であれば、「もっと具体的に特定してください」と電話または文書で要求されますので、できるだけ具体的に特定してください。「請求する行政文書の名称等」の欄に書ききれないときには別紙に書いても大丈夫です。

文書の特定の仕方がわからないときには、情報公開請求する行政機関(Aさんは厚生労働省の下記「情報公開窓口」)に相談してください。

各行政機関の窓口は、前掲の冊子「情報公開制度 教えてペンゾー先生!」の11枚目に明記されています。

それとは別に各省庁等の各行政機関のHPでも情報公開窓口は公表されています。例えば、厚生労働省の場合、「厚生労働省大臣官房総務課公文書監理・情報公開室」です

https://www.mhlw.go.jp/jouhou/madoguchi02/)。

 私たちのメンバの一人が今年4月下旬に厚生労働大臣に対しアベノマスクの情報公開を行った「請求する行政文書の名称等」の一例(補正後)は以下でした(なお、同大臣には以下とは別の情報公開請求もしています。また、小・中学校などに配布される分については以下とは別に文部科学大臣に情報公開請求しました)。

新型コロナウイルス感染拡大への対策の一環として各世帯、妊婦、介護施設、小・中学校等に配布される布マスクについて。

(1)布マスクの配布に関して

①布マスクの配布を決定および配布先の決定を行ったときの文書(又は布マスクの配布の指示および配布先の指示を受けたときの文書)。変更があれば、変更前と変更後の両方の文書。

②布マスクの購入及び配布に要する費用を算定した文書または当該費用の内訳のわかる文書。変更があれば、変更前と変更後の両方の文書。

③布マスクの配布先(各世帯、妊婦、介護施設、小・中学校等)の内訳を記載した文書。変更があれば、変更前と変更後の両方の文書(以上、電子メールとその添付文書を含む)。

(2)業者との布マスク契約等に関して

①厚生労働省が購入する布マスクについて業界又は業界団体に出した募集文書。

②厚生労働省が布マスクを購入するために行った入札結果を含む入札に関する文書。

③各布マスク業者の見積書、同業者との契約書、同業者の納品書など厚生労働省が布マスクを購入した際の文書。

④その他、厚生労働省が布マスク購入に関し販売業者との間でやり取りした文書(以上、電子メールとその添付文書を含む)。

(3)完成した「行政文書開示請求書」を提出する

 前述の必要事項を記入(入力)した「行政文書開示請求書」は、情報公開請求先となる行政機関の情報公開窓口(前掲)に提出する必要があります。それには、以下の3つの方法があります。

(ア)情報公開窓口に出向き、直接「行政文書開示請求書」を提出する方法

(イ)情報公開窓口に「行政文書開示請求書」を郵送などで送付する方法

(ウ)情報公開窓口にインターネットを利用し、オンラインで請求する方法開示請求手数料は300円ではなく200円になります。ただし、この方法を認めていない行政機関もありますので、請求する機関に事前に確認してください

 

3.送られてきた開示の実施方法などの申出書を記載し送付する

 情報公開請求する行政文書の特定が不十分である場合には、前述したように特定のための補正を行うよう要求されますが、十分特定され補正の要求がない場合には、原則として30日以内で開示しますという「行政文書開示決定通知書」が送られてきます(開示決定期限等の延長がなされた後もその延長された期限内に「行政文書開示決定通知書」が送られてきます)。

 「行政文書開示決定通知書」には、どのような行政文書が開示されるのか、具体的に明記されており、開示される行政文書に不開示すべき情報が含まれていなければ不開示部分がないことが明記されます(全部開示)

 しかし、不開示すべき情報が含まれていれば、不開示とされる部分がどのような情報であるのか、不開示にする理由は何なのかが明示されています(部分開示)

 また、「行政文書開示決定通知書」には、「開示の実施の方法等」が明記されています。それを読むと、(ア)開示を行う行政機関の事務所で行政文書を見る閲覧のほか、行政文書の写しの交付を受ける方法があることがわかるのですが、写しの交付については、さらに、(イ)複写機で複写した紙の行政文書の交付を受ける方法、(ウ)スキャナーで電子化しCD―Rに複写したものの交付を受ける方法、(エ)スキャナーで電子化しDVD―Rに複写したものの交付を受ける方法があることがわかります。

そして、すでに送付した請求手数料300円(オンラインの場合200円)で十分だったのか、それとも不足分があり、追加の開示手数料が必要なのかどうか、必要な場合はその収入印紙が幾らなのかが、「閲覧」「複写」「CD―R」「DVD―R」毎に明記されています

 「閲覧」の場合は、情報公開窓口で請求した行政文書を見ることになります。行政文書の写しを受けることを希望した情報公開請求者は、情報公開窓口で受ける方法と郵送等の送付を受ける方法があります。

 同封されている「行政文書の開示の実施方法等申出書」に必要事項を書いて、「開示の実施の方法等」に明記されていた不足(追加)の収入印紙を購入し、貼り付けます

郵送など送付を受ける場合には、明記されている送付代分の切手を郵便局などで購入し、それを同封します(ただし特許庁の場合は前述したように別)。そうすると、10日程度(早ければ1週間以内に。遅いと10日を超える場合もあります)で開示文書が届きます。

 なお、もし不足分の収入印紙や切手が幾らになると明記されていない場合には、電話などでそれらを確認しなければなりません。

 

最後に

 情報公開請求は誰でもできます。以上の説明を参考に実際に情報公開請求してみませんか。わからないことがあれば、各省庁の情報公開窓口に相談しながら請求してみてください。親切に教えてくれますよ。

以上。

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