黒川弘務東京高検検事長の定年延長を決めた閣議決定に関し情報公開請求し提訴した理由・目的

はじめに

 東京高等検察庁の黒川弘務検事長は、賭けマージャンをしていたことが発覚したため、辞表を提出し、辞任は5月22日の閣議で正式に認められました。

 今回紹介する私の情報公開請求と提訴は、それよりもほんの少し前のことです。

 

(1)情報公開請求した理由

 検察庁法によると、「検事総長は、年齢が65年に達した時に、その他の検察官は年齢が63年に達した時に退官する」と定められていたので、当時、東京高等検察庁検事長だった黒川弘務氏は今年2月8日の63歳の誕生日をもって検察官の定年を迎える予定でした。

 にもかかわらず、安倍晋三内閣は、その直前の1月31日の閣議で黒川氏につき「国家公務員法の規定に基づき、6か月勤務延長する」ことを決定しました。

 しかし、その閣議決定は明らかに前述の検察庁法に反します。

 黒川氏は、これまで財務省「森友学園」事件など数々の政権不祥事事件につき検察に不起訴処分をさせた人物で、「官邸の守護神」と呼ばれていました。

 閣議決定後の2月13日の衆議院本会議で安倍首相は「検察官の勤務(定年)延長に国公法の規定が適用されると解釈することとした」と答弁し、まるで閣議で解釈変更をしたかのように弁明したのです。

 しかし、その3日前(2月10日)の衆議院予算委員会での森法務大臣の答弁内容を確認しても、同月12日の人事院の総務局給与局長の答弁内容を確認しても、閣議決定で国公法の解釈が変更され検察官にも定年延長が認められるようになったという認識はないのです。

 これもオカシイ!

 私は、2月26日に、法務大臣、人事院および内閣法制局に対し、「閣議決定前」と「閣議決定後」に分けて、法務省が国家公務員法の定年延長制を検察官に適用することに関し、相談した内容を記録した文書と回答した内容を記録した文書等の情報公開請求を行いました。

 

(2)関係文書の開示と不開示

 私の請求に対し法務大臣は開示決定等の期限の延長後、4月24日付で、「閣議決定前」の文書として、①(法務省)「勤務延長制度(国公法第81条の3)の検察官への適用について」、②人事院「勤務延長に関する規定(国公法第81条の3)の検察官への適用について」と題する文書を全部開示する決定をしましたが、「閣議決定後」については「作成または取得しておらず、保有していないため」との理由で不開示決定しました。

 人事院事務総局給与局長は、開示決定等の期限の延長後、4月24日付で、「閣議決定前」の文書として、上記①と上記②を全部開示する決定をしましたが、「閣議決定後」については「作成・取得していないことから、文書不存在のため不開示」としました。

 内閣法制局第二部は、私の情報公開請求のうち、「閣議決定前」の文書として③「応接録」(勤務延長制度(国家公務員法第81条の3)の検察官への適用について)を法務大臣に移送し、それを受けた法務大臣は、私に対し、4月24日付で、当該③を全部開示する決定をしました(この文書のほかに上記①および2冊の文献の一部の写しも開示)が、内閣法制局長官は、「閣議決定後」については、同年3月27日付で「保有していないため」との理由で不開示決定しました。

 

(3)提訴した目的

 以上の開示された各文書には、いつ、誰によって作成されたのか、それはどのような協議の結果なのかなど、文書の作成年月日、作成者、その結論に至るまでの協議内容、経過が全く記載されていませんでした。公文書管理法、公文書ガイドライン、各省庁の公文書管理規則などに従えば当然に記載されているはずですが、記載されおらず、本当に「閣議決定前」に作成されたものなのかさえもわかりません。もし閣議決定前に作成した文書というなら、それを証明する文書と一体にして開示すべきですが、そのような開示はなされませんでした。

 公開された文書は、無責任に、誰でも、何時でも作成できるメモ的文書あるいは「作文」に過ぎないと言って過言でなかったのです。これでは、公文書管理法に定める「意思形成過程」を明らかにした文書ではありません。本当に「閣議決定前」に作成されたものなのか不明であり、「意思形成過程」を明らかにしない文書は、違法な開示決定として取り消されるベきです。

 私は、代理人の弁護団を通じて6月1日に、私に行われた開示決定と不開示決定の一部の取消しを求めて大阪地裁に提訴しました

 この訴訟により、私に開示された各文書は、いつ誰の命を受けて誰によって作成されたのか明らかにしたいと思いますし、また、黒川検事長(当時)の定年延長の閣議決定がどのような経緯で、何故行われたのか、その真相を解明したいとも思っています。

以上。

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