はじめに
政治資金収支報告書(収支報告書)について、実際の収支報告書の収支の内容を分析するとして、「桜を見る会前夜祭」の収支不記載を例に、「安倍晋三後援会」(後援会)の収支報告書を分析し、2018年「桜を見る会前夜祭」前払い時の「後援会」の裏金収入は約205万円だった疑惑を指摘し、
続いて、2016年~2018年の裏金収入は計約593万円であり、2013年と2014年も裏金収入の可能性ある疑惑を指摘しました。
以上では、「後援会」が「前夜祭」開催1か月前に見積額を前払いするという通常の手続きを前提にしました。
しかし、これとは異なる報道が出ています。それは、「前夜祭」当日、会費収入による支払が行われ、不足する分については安倍晋三前首相の資金管理団体「晋和会」が後日支払い補填した、というものです。
これは特別扱いになるので、その報道が真実だと明言できませんが、ここでは、その報道が真実であった場合どのような法的問題になるのか、「晋和会」の収支報告書を分析してみましょう。
(1)「晋和会」が不足分を支払っても「後援会」の政治資金規正法違反(不記載罪)は消えない!
その報道が真実であったとしても、これまで指摘した「後援会」の犯罪容疑は消えません。
「前夜祭」は「後援会」主催ですから、「後援会」が会費収入をその支出(ホテルへの支払い)を含め各収支報告書(下記)に記載していないので、「後援会」がその点で政治資金規正法違反(不記載罪)になることは明らかです。
また、「後援会」が「晋和会」に不足分を補填してもらっていたら、その分は「晋和会」から寄附を受けたことになりますが、「後援会」の各収支報告書(下記)にはその寄付受領について記載をしていないので、この点も政治資金規正法違反(不記載罪)になります。
◇「後援会」の収支報告書
2013年(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350405/2013.pdf)
2014年(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350405/2014.pdf)
2015年(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350405/2015.pdf)
2016年(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350405/2016.pdf)
2017年(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350405/2017.pdf)
2018年(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350405/2018.pdf)
(2)「晋和会」の政治資金規正法違反(不記載罪)
では、「晋和会」は「前夜祭」に関する不足分の支払い(「後援会」への寄附)を収支報告書に記載しているのでしょうか?
その収支報告書で確認しましょう。
その前に、ここでも、「前夜祭」の毎年の収支に相当する「費用総額」(支出額)、「会費」(収入額)、「安倍氏側の補塡額」(不足額)について、「安倍氏側、『桜を見る会』夕食会に5年で916万円負担」朝日新聞(2020年11月25日 5時00分)で確認しておきましょう。
年 | 費用総額 | 会費 | 安倍氏側の補塡額 |
2015年 | 427万円 | 270万円 | 157万円 |
2016年 | 407万円 | 229万円 | 177万円 |
2017年 | 427万円 | 241万円 | 186万円 |
2018年 | 448万円 | 304万円 | 145万円 |
2019年 | 634万円 | 384万円 | 251万円 |
合計 | 2343万円 | 1428万円 | 916万円 |
2019年分の収支報告書は、まだ山口県選管がネット公表していないので、公表されてから確認するとして(近日公表)、2015年分から2018年分について、各収支報告書で確認しましょう。
◇「晋和会」の収支報告書
2013年分(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350403/2013.pdf)
2014年分(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350403/2014.pdf)
2015年分(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350403/2015.pdf)
2016年分(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350403/2016.pdf)
2017年分(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350403/2017.pdf)
2018年分(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350403/2018.pdf)
すでに報道されている通り、「晋和会」の各年の収支報告書を確認しても、各「前夜祭」に関する支出(ホテルへの支払い)を記載してはいません。「晋和会」は政治資金規正法違反(不記載罪)になります。
(4)「晋和会」の不足分肩代わり額は裏金収入額
前述の朝日新聞の報道によると、安倍氏側の補填額は、2015年157万円、2016年177万円、2017年186万円、2018年145万円、計665万円でした(2019年分は収支報告書が公表されたら確認します)。
「晋和会」は「後援会」と違い、政治資金が豊富なので、補填する政治資金を十二分に保有していました。しかし、その補填を収支報告書に記載していなかったということは、裏金収入があったことになります。つまり、2013年から2018年までの計665万円の補填額がそのまま裏金収入額になります。
(5)公職選挙法違反(違法な寄付供与罪)は「安倍晋三後援会」と「晋和会」の共犯!
「晋和会」が支払った「前夜祭」不足分は公職選挙法が禁止している選挙区内の者への寄附になりますので、公職選挙法違反(違法な寄付供与罪)は主催者「後援会」と不足分を肩代わりした「晋和会」の共犯になります。
以上。