財務省「森友学園」交渉記録の情報公開請求、提訴(第一次訴訟)、請求の変更、控訴の理由・目的

はじめに

 いわゆる財務省「森友学園」事件については、まだ十分真相解明されたとは言えないことが多々ありますし、私がその事件で情報公開請求し原告として争ってきた訴訟についても、実はまだ終わっていないものがあるのです。以下では、その訴訟について紹介します。まずは、私がその事件で最初に情報公開請求した理由から説明しましょう。

(1)財務省「森友学園」交渉記録を情報公開請求した理由

 木村真・豊中市議が2017年2月8日に森友学園への国有地の売払い価格の非開示処分の取消を求める情報公開訴訟を提起したという報道がありました(朝日新聞2017年2月9日)。

 その報道によると、①森友学園側に契約違反があった場合、国が「1億3400万円」で買い戻す特約がついており、森友学園の籠池泰典理事長は売却額が買い戻し特約と同額と認めており、その売却額は同じ規模の近隣国有地の10分の1であり、②森友学園が買った土地には、春に同学園が運営する小学校が開校する予定で、同校の名誉校長は安倍晋三首相の妻・昭恵氏であり、③国有地の売却結果は透明性と公正性を図る観点から原則として公表するとされているのに、財務局は学園側からの申し入れを受け価格を非公表にした、というのです。

 これはどう考えても怪しすぎます!

 知り合いが入手してくれた、開校予定の小学校のパンフレットを見ると、確かに安倍昭恵氏が名誉校長として顔写真つきで「ごあいさつ」を寄せていたのです。そこで私は、森友学園への国有地売払いについて「適正な対価」なくして国有地を譲渡することを禁止している財政法に違反するのではないかとの疑念を抱き、翌3月2日近畿財務局に対し「森友学園」等との「交渉・面談記録」など多くの文書を情報公開請求したのです。

 なお、全国300名以上の弁護士・研究者の賛同を得て同年4月20日「国有地低額譲渡の真相解明を求める弁護士・研究者の会」(代表:阪口徳雄弁護士、後に共同代表・菅野園子弁護士)が発足し、私も参加しました。

 

(2)提訴(第一次訴訟)の目的

 私の請求に対し近畿財務局は、同年5月2日付「行政文書開示決定通知書」で、「交渉・面談記録」も開示すると決定したのです。当時、財務省の佐川理財局長はその記録について「廃棄した」と答弁していたので、その決定には驚きました。

 ところが、実際に開示された行政文書を確認したところ、「交渉・面談記録」は1枚もなかったのです。

 国は財政法違反の超破格の値引きをして国有地を売り渡したのに、その「交渉・面談記録」が廃棄されるなど官僚の論理ではありえないことだし、当然公開されるべきだと思いました。また、なぜ超破格の値引きがなされたのか、そこに安倍昭恵氏らがどのように関与したのか等、政府はその経緯を正直に説明する責任があるのに、その説明責任を果たさないままですが、主権者・納税者からすれば、その真相解明は当然なされるべきだと強く感じました。

 そこで、私は、代理人の弁護団を通じて、同年6月6日「交渉・面談記録」を「開示しないのは違法」という不作為の違法確認訴訟を提訴しました(第一次訴訟)。

 この第一次訴訟において、国に釈明を繰り返す中で「開示も不開示もない」ことは「不開示決定を出した」という意味だと言い始めたので、原告・弁護団はやむなく「森友学園」等との「面談・交渉記録」については不開示決定があったということで、その取消訴訟を追加しました。

 なお、「森友学園」への国有地売払の際に財務省が作成した決裁文書については、契約当時の文書の内容と、2017年2月の問題発覚後に国会議員らに開示した文書の内容に違いがあり、「書き換えの疑い」があると朝日新聞が2018年3月2日付朝刊でスクープ報道。同新聞は売払前の賃貸の決裁文書でも「書き換え」疑惑を翌3日付朝刊で報じました。財務省は同月12日に「書き換え」を認め、78頁に及ぶ調査結果を公表しました。14の決裁文書で変更部分は300カ所にのぼりました。その「書き換え」は、重大な事実を削除あるいは捏造していたので、明らかに“改竄”でした。

 財務省は同年5月23日に「森友学園と近畿財務局と面談、交渉記録」文書など合計217件の文書があったことを世間に公表し、翌6月4日には内部調査結果をまとめた報告書を公表しました(財務省「森友学園案件に係る決裁文書の改ざん等に関する調査報告書」2018年6月4日)。

 しかし、第一次訴訟において国はなかなか「面談、交渉記録」を開示しませんでした。

 近畿財務局は翌2019年4月2日付「行政文書開示決定通知書」において、やっと「217件の各文書のうち……決定当時に行政文書として当局が保有している文書に関し不開示とした部分を取り消し、新たに……開示することとしました」と原告の私に通知してきました。そして同月9日私の手元に開示文書が届いたのです。

 

(3)国家賠償請求に変更する申立と勝訴判決

 私の当初の情報公開請求から2年近くが、財務省の調査結果をまとめた報告書から10か月が、それぞれ経過していました。

 したがって、この件も私が当初開示請求した時点で実際開示できたはずです。何故このように2年経過してやっと開示してきたのか、もっと早い2017年5月2日の決定時に開示しなかったのか、当時の佐川宣寿理財局長らが財務省内部でどのような理由で遅らせたのか真相解明を求めて、第一次訴訟につき1100万円の国家賠償請求に変更する申立を2019年7月8日に提出しました

 大阪地裁は同月30日付で、この変更を許可する決定をしました。

 原告弁護団は、当時公文書を「廃棄、隠匿」した財務省本省の中村稔総務課長(当時)を証人申請しましたが、国は間もなく同課長を外交官として栄転させ、証人申請を回避しようとしました。また、同時に財務省の隠ぺい工作について佐川宣寿理財局長(当時)の証人申請もしましたが、国は佐川氏らが法廷に呼びだされ、2時間も3時間も原告側の弁護士に尋問されては困るので、「遅くなったことについての違法性は特に争わない」と言い始めたそうです。原告・弁護団は繰り返し証人尋問の必要性を法廷で繰り返しましたが、裁判長は情報公開法上の「違法性」について国が認めている以上は尋問の必要性がない、となったそうです。

 同年6月25日に大阪地裁(第7民事部)は、判決主文で、被告国は原告に対し33万円の支払いをするよう言い渡し、原告の私は勝訴しました。裁判所は国の国家賠償法上の“故意”を認定したのです

 つまり、安倍政権において財務省は情報公開請求された文書を保有していることを認識していながら、故意に情報公開法に違反して文書を開示しなかったと裁判所は判断し、大阪地裁は、国が私に文書を公開しなかったことを断罪したのです。したがって、私たち原告・弁護団は、この判決を高く評価しました。

 

(4)真相解明を求め控訴

 ただし、国が請求された文書を開示しなかった動機については、財務省の調査結果の報告書が記載している内容の枠内にとどまっており、それが必ずしも真実とは言い難いので、大阪高裁に控訴して、自殺した財務書近畿財務局職員・赤木俊夫さんの(口頭弁論終結後に公表された)遺書(「週刊文春」2020年3月26日号(同月18日発売)掲載)を裁判所に提出し、中村・佐川氏らの証人尋問を求めることにしました。

 そして、7月1日、私は代理人弁護士を通じて大阪高裁に控訴状を提出したのです(国家賠償請求額は333万円)。

 皆さん、是非とも、この訴訟に注目し、ご支援いただければ幸いです。

以上。

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