はじめに
半月ほど前の今月(2025年6月)5日(木)アベノマスク第2次訴訟で原告勝訴の判決があり、昨日(6月20日)原告勝訴が確定したことを受けて原告・弁護団は国に申入書を郵送しました。
それぞれ報道機関が大きく報道したので、御存じの方も少なくはないと思います。とはいえ、「第2次訴」となると、「第1次」はどのような訴訟だったのかと疑問に思われる方もあるでしょうから、少し説明しましょう。
アベノマスク第1次訴訟とはアベノマスク単価情報公開訴訟であり、アベノマスク第2次訴訟とはアベノマスク契約締結経過文書情報公開訴訟です。原告は、いずれも神戸学院大学法学部の上脇博之教授です。
1.アベノマスク単価情報公開訴訟(第1次訴訟)
2020年、安倍晋三政権は、コロナ対策の場当たり的な方針で、失敗の典型例であるアベノマスクを国民に配布しました。上脇教授が厚生労働省と文部科学省にアベノマスクの単価等の開示請求を行なったところ、両省は、いずれもアベノマスクの単価等の部分を非公開にして関係文書を公開したので、同教授は、同年9月28日に、その非公開の取消等を求めて大阪地裁に提訴しました。あわせて、厚生労働大臣が自ら設定した開示決定延長期限を遵守せず、長らく放置したことについて60万円の国家賠償を請求しました(訴状)。提訴の目的はすでに紹介しました。
当時開示された文書は紹介しました。 アベノマスクの費用が総額約500億円であり、その内訳も紹介しました。
提訴から2年5カ月後の2023年2月28日、大阪地裁は、契約書等の単価の不開示決定を違法として取消し、開示決定を義務付ける原告勝訴の判決を下しました。原告・弁護団は声明も出しました(アベノマスク単価情報公開訴訟で勝訴判決!)。
判決の3日後には、弁護団の「弁護士のつぶやき」を紹介しました(アベノマスク大阪地裁判決を国は控訴するほど馬鹿ではないと信じたい)。
国は控訴せず確定しましたので、原告と弁護団長のコメントを出しました(アベノマスク情報公開訴訟(単価訴訟)大阪地裁判決の確定について)
国から開示された文書を分析しました(愚策だったアベノマスク事業の開示文書を分析しました(その1)、愚策だったアベノマスク事業の開示文書を分析しました(その2))。1枚62円~150円と2倍以上の開きがあることが判明しました。
2.アベノマスク契約締結経過文書情報公開訴訟(第2次訴訟)
上脇教授は、国と業者との価格交渉過程のやりとりの文書を、厚生労働省と文部科学省に情報公開請求をしたところ、厚生労働省と文部科学省は、いずれも、そのような途中の「意思形成過程」の文書は存在しないと不開示決定をしてきたので、2021年2月22日その取消を求めて大阪地裁に提訴しました。
提訴後、国の不開示理由・主張(説明)が以下のように変遷します。
①不開示決定時、厚労省は「作成・取得したことがなく不存在」と不開示理由を説明していました。
➁しかし、提訴直後の当初の国の主張は、メールはあったが1年未満文書としてその都度廃棄したと説明が変わりました(①の説明は誤りだった)。
③2022年2~3月、大阪地裁の文書送付嘱託手続で一部業者からメールが提出されたところ、国は「送付嘱託結果を受けて再調査・再検討」 と繰り返し期日が空転し、同年.7月、国は請求書等の紙文書、100通以上のメールがあったと説明したのです。
裁判所は「開示決定するのか?」と問いました。
④提訴から1年半以上経過した同年11月、国は、今回の原告の開示請求対象文書は「組織としての意思表示、意思決定が記載」、「契約締結から納品までの実質的な過程が分かる文書」と(限定的に)解釈した上記発見文書、メール等はいずれも請求対象文書には該当しない(そのため開示決定はしない)、国が「不存在」として不開示決定をしたことに違法はなかったと説明を変えたのです。
⑤提訴から2年以上経過した2023年5月、国は、メール等について送受信から1年間はバックアップファイルが残っていたが、すでに1年経過しているので、今はないと説明。
そこで、原告は、2023年2月2月、国賠訴訟(110万円請求)を追加したのです。
2024年8月、10月 経産省、厚労省、文科省の職員6名の尋問が行われました。
2024年12月24日、結審。
そして、今月(2025年6月)5日、大阪地裁は、不開示処分を取消し、11万円の賠償を認容する原告勝訴の判決を下したのです。判決文は以下です。
各報道機関が報道してくれました。
そして、原告勝訴の判決が確定しました。
これを受けて昨日(6月20日)原告・弁護団は国に申入書を郵送したのです。申し入れは以下の4項目。
1 判決内容の完全な履行と探索過程の原告への説明、関連文書の即時全面公開
2 作成・取得・保有しないはずがない公文書を「不存在」とした経緯や訴訟において事実に反する主張を意図的に行ったことに関する徹底的な調査と責任の明確化
3 公文書管理制度の抜本的な改革と再発防止策の策定
4 国民に対する謝罪とアベノマスク事業の調査・検証
詳細は以下の申入書をお読みください。
以上。