菅義偉総理の官房長官時代の内閣官房報償費(機密費)の使途文書を公表します

情報公開請求と3つの提訴

 「内閣官房報償費」をご存知でしょうか?

その使途は一切公表されず、会計検査院でさえ、その使途の詳細を検査できない公金なのです。それゆえ「官房機密費」とも呼ばれてきました。

この内閣官房報償費については、実際には自民党のための支出がなされている(つまり目的外支出がなされいる)との疑惑が国会でも取り上げられてきました。財政法は公金の目的外支出を禁止しています(第32条)ので、その疑惑が真実であれば、その支出は違法です。

ところが、その使途が公表されず、会計検査院でさえ使途の詳細を検査できないため、疑惑がもたれたまま存続してきたのです。

 そこで、政治資金オンブズマンの共同代表をしている私は、安倍晋三衆議院議員らが官房長官をしていた小泉内閣時代の内閣官房補償費の使途について2006年10月に情報公開請求しました。しかし、1枚の文書も開示されない全部不開示とされたので、その取消を求め提訴しました(第一次訴訟)。政治資金オンブズマンのもう一人は、民主党政権に移行する直前分(2009年の河村官房長官時代)を情報公開請求し同じように全部非開示にされたので提訴しました(第二次訴訟)。2012年12月第2次安倍内閣(菅義偉官房長官)が発足したので私は、2014年1月、2013年(1年間)の内閣官房報償費の支出関係文書を情報公開請求し、同じく全部不開示だったので、訴訟を提起しました(第三次訴訟)。

これら3つの訴訟では、第1審などで私たち原告が一部勝訴したこともあって、最高裁まで争われることになりました。

提訴後にわかったこと

訴訟を提起して分かったことがあります。まず、内閣官房報償費には支出の目的別に「政策推進費」「調査情報対策費」「活動関係費」の3つの類型があることがわかりました。

政策推進費」とは「内閣官房長官が、政策を円滑かつ効率的に推進するために機動的に使用するもの」であり、官房長官「自ら出納管理を行い、直接相手方に渡す経費」。これは、「非公式の交渉や協力依頼に際して関係者の合意や協力を得るための対価」、「有益な情報を得るために支払われる対価」です。公式の金銭出納帳はなく、領収書なしも可能とのことです。闇ガネになっていると表現しても過言ではありません

「調査情報対策費」と「活動関係費」は、官房長官自らではなく「事務補助者をしてその出納管理に当たらせる経費」。

また、内閣官房報償費の支出に関する行政文書には「政策推進費受払簿」「報償費支払明細書」「出納管理簿」「支払決定書」「領収書等」の5つの文書があることもわかりました。

最高裁の画期的判決

そして、最高裁第2小法廷は、2018年1月19日に私たち原告一部勝訴という“画期的判決”を下しました。より具体的には、支出の相手方が一切記載されていない「政策推進費受払簿」と、「出納管理簿」・「報償費支払明細書」のうち「政策推進費の繰入れに係る記録部分」について開示を命じたのです。

勝訴したのは一部ですが、それは重要な一部であり、開かずの扉をこじ開け、暗闇に大きな光を当て、国民の一定の監視を可能にする判決でした。

一部勝訴してわかったこと(領収書の不要な政策推進費が約9割)

そして、2018年3月19日、内閣官房報償費の使途文書の一部について開示を受けました。

1か月の内閣官房報償費の支出は原則として平均1億円なのですが、そのうち,概ね9割前後が領収書の要らない「政策推進費」として使用されている、より具体的に紹介すると、安倍長官時代は平均で88・2%、菅長官時代のうちの2013年は平均で92・3%だったことが判明したのです。

実は、弁護団の一人が2014年1月以降2017年12月末までについて情報公開請求していたので、その分についても、最高裁判決後に上記の使途文書の開示を受けました。

第2次安倍政権(菅義偉官房長官)の誕生2012年12月以降2017年までの内閣官房報償費の情報公開請求の結果をまとめたのが、以下です。リンクを貼っていますので、クリックしてご覧ください。

第2次安倍政権2012年12月以降2017年12月までの内閣官房報償費の使途のまとめ一覧

※以上についての詳細は、上脇博之『内閣官房長官の裏金 機密費の扉をこじ開けた4183日の闘い』(日本機関紙出版センター・2018年)で詳細を紹介していますので、興味のある方はご一読ください。

2020年9月に過去の分を情報公開請求

私は、安倍総理が2020年8月末に辞任を表明したので、2018年以降2020年9月までの菅義偉官房長官時代の内閣官房報償費の使途のわかる文書を以下のように特定し情報公開請求しました。

1.内閣官房報償費にかかる支出計算書、2.内閣官房報償費にかかる支出計算書の証拠書類、3.内閣官房報償費にかかる具体的な使途のわかる支出関係書類。なお、①内閣官房長官から会計課長への請求書、②①を受けて作成された支出負担行為即支出決定議決書、③①を受けて作成された支出計算書、④出納管理簿、⑤報償費支払明細書、⑥領収書等、⑦政策推進費受払簿、⑧支払決定書を含む。

ただし、期間を以下のように小刻みに分けて開示請求しています。

①2018年1月1日から同年3月31日まで、②2018年4月1日から2019年3月31日ま、③2019年4月1日から2020年3月31日まで、④2020年4月1日から7月31日まで、⑤2020年8月1日から同月27日まで、⑥2020年8月28日から9月11日まで、⑦2020年9月12日から同月16日まで、⑧2020年9月17日から同月30日まで。

2020年に開示を受けた内閣官房報償費の使途文書

私が開示を受けた文書をそのまま公表します。ご覧になったことのない方は、是非ともご覧ください。菅官房長官がほとんどの場合、1回の請求において5000万円を請求していること、一月に5000万円の請求を2回行っていることなどがわかります。また、そのうち、毎月それぞれ「政策推進費」が幾らだったのかもわまります。以下、リンクを貼っていますので、クリックしてご覧ください。

2018年1月1日から同年3月31日まで

2018年4月1日から2019年3月31日まで

2019年4月1日から2020年3月31日まで

2020年4月1日から7月31日まで

2020年8月1日から同月27日まで

2020年8月28日から9月11日まで

2020年9月12日から同月16日まで

2020年9月17日から同月30日まで

私は十分チェックできていませんが、私とは別に情報公開請求して開示を受けた記者のまとめによると、2013年度以降2019年度まで毎年度12億3000万円超が内閣官房報償費として支出され、そのうちの約9割が領収書の要らない「政策推進費」であり、菅義偉官房長官の自由裁量で支出していたことがわかっています(上記開示文書をご覧になり、もし違ったら、ご指摘ください)。

                                  以上。

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