【「桜を見る会前夜祭」事件】「晋和会」の2013年分補填の記載等についての疑問

はじめに

政治資金収支報告書(収支報告書)の実際の収支報告書の収支の内容を分析するとして、「桜を見る会前夜祭」の収支不記載を例に、その主催者である「安倍晋三後援会」(後援会)とは別の政治団体である「晋和会」が、経費の未支払い分(不足分)を補填して支払ったという特別扱いがなされたという報道を前提に、収支報告書を分析し、「晋和会」が裏金を保有していたことになるとの疑惑を指摘しました。

ところで、①2013年には、安倍氏側が「前夜祭」の開催費用について収支報告書への記載方法を総務省に問い合わせ、政治団体に支出が生じれば記載する必要があると回答を受けており、

また、②「晋和会」が2013年分につき「後援会」の未払い分(不足分)をホテルに支払い、それを収支報告書に記載し領収書の写しも添付して提出していたが、

③2014年以降は収支報告書の記載がなく、ホテルの発行した領収書も廃棄した

との報道があります。

以下では、これらの点について順次取り上げて、疑問点などを指摘します。

(1)安倍事務所の総務省への問い合わせについての不可解

 2013年には、安倍氏側が「前夜祭」の開催費用について収支報告書への記載方法を総務省に問い合わせ、政治団体に支出が生じれば記載する必要があると回答を受けていたとの報道がありました。

 そもそも何らかの事業で収支が発生すれば収支報告書に記載しなければならないことは安倍事務所の職員も当時わかっていたはずです。

 例えば、2013年よりも前の、「晋和会」(代表・安倍晋三)の2011年分収支報告書を見ると、各事業に関する収入も支出も記載しており(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350403/2011.pdf)それは2012年も同じであり(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350403/2012.pdf)、

会計責任者・事務担当者は2011年も、2012年も、2013年も同じ人物です(2013年分収支報告書は後掲)。

 「後援会」も同じように各事業については収支を収支報告書に記載していましたし、会計責任者と事務担当者は別人ですが、2011年から2013年までの間に交代してはいません。

2011年(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350405/2011.pdf

2012年(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350405/2012.pdf

2013年(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/140301/2013.pdf

ですから、安倍氏側が「前夜祭」の開催費用について収支報告書への記載方法を総務省に問い合わせしたというのは全く不可解です。本当なのでしょうか?

もし本当だとしたら、「あえて問い合わせをしなければならないと思った特別の事情」があったのではないかと思えません。

その特別の事情とは、例えば、誰か(安倍晋三か!?)の指示で「記載するな」と言われたものの、心配になって問い合わせたのかもしれません。

あるいはまた、事業について収支報告書に記載するのは通常その収入と支出の両方ですが、支出(「後援会」の支払っていない分だけを補填するための支出)だけを記載するのは不自然なので不自然なので、困ってしまって問い合わせをしたのかもしれません。

いずれにしろ、本当に問い合わせをしたのでれば、違法行為を行うことを前提に問い合わせをした可能性が高いのではないでしょうか。

(2)「晋和会」の2013年分収支報告書の記載への疑念

「晋和会」が2013年分につき「後援会」の未払い分(不足分)をホテルに支払い、それを収支報告書に記載し領収書の写しも添付して提出していたと報道されました。

そこで「晋和会」の2013年分収支報告書(https://www.openpolitics.or.jp/pdf/350403/2013.pdf)における、その支出の記載を確認しました。すると、その38枚目のページに、報道されている「829,394」円が記載されており、その支出は、2013年5月10日付で、支出先は「㈱パノラマ・ホテルズ・ワン」(港区赤坂・・・)と明記されています。同年の「前夜祭」は「ANAインターコンチネンタルホテル東京(宴会場)」で開催されており、支出先として「㈱パノラマ・ホテルズ・ワン」と記載されているのは、矛盾しないのだそうである。

しかし、その記載は、事業の支出欄ではなく、「組織活動費」の中の「行事費」であり、支出の目的は「本会 会合費」と明記されており、事業としての「前夜祭」と書かれていないだけではなく、「宴会費」とも「懇親会費」とも書かれてはないのです。したがって、「829,394」円の記載が、本当に「前夜祭」の経費不足分の補填として支出なのか、疑問が生じます。

また、領収書では、「御利用代として」と明記されており、「宴会費」とも「懇親会費」とも書かれてはいなかったのです。

もしも本当に「前夜祭」の経費不足分の補填として支出なのであれば、「829,394」円が真実であったとしても、「組織活動費」の中の「行事費」で、かつ支出の目的を「本会 会合費」と記載されてるのは、虚偽だということになります(政治資金規正法違反)。

おそらく、「前夜祭」の経費不足分の補填として支出であることが発覚しないように、虚偽の記載をしたのでしょう。

(3)2014年以降の不記載と「領収書」の廃棄について

 ところが、「晋和会」は、2014年以降の収支報告書に、2013年と同じような記載がなく、ホテル側が発行した領収書を廃棄したというのです。

 これについては、これまでの指摘したように、「後援会」の収支の不記載(政治資金規正法違反)はいうまでもなく、「晋和会」の支出の不記載と補填した原資の不記載になりますが、ここで注目したいのは、2014年以降である点と領収書を廃棄した点です。

2014年分以降、不記載にしたのは、何かきっかけがあったのでしょう。例えば、2014年9月に発足した第2次安倍改造内閣で経済産業大臣に任命された小渕優子衆議院議員の政治団体が、後援会員を観劇会に連れてゆき経費の不足分を政治団体が負担していた問題を週刊誌が翌10月にスクープ報道し辞任しました。小渕大臣の場合は、事業の一部を記載していたことで発覚しました。そこで、安倍首相の「晋和会」は、補填分を一切記載しなくなった可能性があります。

また、領収書の廃棄(あるいは秘匿・隠蔽)は「後援会」も行っていることでしょうが、「晋和会」が領収書を廃棄したのは、その補填の原資が裏金であるからでしょう。つまり、補填の原資が表に出せないカネである以上、それによって補填した支出の領収書も表に出せない以上、廃棄されたのでしょう。

(4)安倍首相主導の企画のはず

 「桜を見る会」と「前夜祭」はワンセットなので、「前夜祭」の日程は「桜を見る会」の日程が決まらなければ決められない。「桜を見る会」は安倍首相(当時)主催である。「前夜祭」には安倍首相の出席している。したがって、「前夜祭」は安倍首相主導で企画されたのであろう。

 高級ホテルで大規模な宴会を開催すれば参会者一人5000円では不可能なことは、漢字が読めなく非常識な安倍首相でも、わかっていることです。山口の地元の後援会員は「桜を見る会」に参加するために飛行機代と宿泊代を自腹で支出しているので、「前夜祭」の参加費を抑える必要があると判断したのでしょう。そう判断したのも安倍首相でしょう。

 2014年以降は裏金で補填することにしたのも、安倍首相らだったのでしょう。裏金の原資は、安倍首相のカネ(内閣官房機密費あるいは文書通信交通滞在費など)、あるいは、「晋和会」が受け取っていた政治資金の一部(パーティー券の売り上げの一部あるいは違法な寄付など)でしょう。

 したがって、裏金の原資を真相解明するためにも、強制捜査が不可欠になることでしょう。東京地検特捜部が忖度することなく、どこまでやる気を出して捜査するのか。真相解明の有無はその一点にかかっていると言っても過言ではないでしょう。

                                以上

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