概要
9月1日に「近畿財務局への証拠の捜索・押収の要請書」及び「学校法人森友学園い国有地の譲渡に関する平成28年5月31日付不動産鑑定評価書の地下埋設物撤去及び処理費用の内訳書に対する鑑定意見書」を大阪地検の特捜部に提出し、担当検察官に説明をしました。
資料
近畿財務局への証拠の捜索・押収の要請書
2017年9月1日
大阪地方検察庁 御中
246名告発人ら代表 弁護士阪口徳雄
要 請 の 趣 旨
近畿財務局(大阪航空局)の地中埋設物の撤去費用の積算は国土交通省の工事積算基準によるべきところ、その基準によらない「恣意的」な基準で積算したものである。これらに関与した職員達は、「国の積算基準に反する認識」=国(背任罪の本人)の爲に適正に積算していないことを証明する事実であり、それは森友学園を利する目的を有しており、同時に国(背任罪の本人)に損害を与える目的を有していることにもなる。このままで背任罪について任意捜査を続けていても、関係する必要な証拠は御庁に提出されないし、さらには隠匿、廃棄される等して真相の解明ができない可能性が極めて高い。よって強制捜索(パソコン内の文書が「削除」「消去」されていても、デジタルフォレンジック調査を実施するなど)をして背任罪などの関係証拠を早急に捜索・押収するよう要請する。
要 請 の 理 由
1 本件土地に地中埋設物が合計19520トンあったので、8億1900万円を減額している。仮に近畿財務局の認定する通り、地中埋設物が合計19520トンあったとして、「国土交通省が定める工事積算基準」で積算を専門家(一級建築士平野憲司)に鑑定を依頼したところ8億余の控除金額が極めて恣意的金額である事実が判明した。この事実は被告発人らの積算額は国(背任罪の本人)の為に積算したものでないことが判明した。
大阪航空局が本件土地内の「地下埋設物撤去費用及び処理費用」の地中埋設物の量が19520トンだとして、金819,741,947円であると査定した。山本鑑定士の鑑定意見書添付の資料(甲1号証5頁)によると「処理費用算出根拠」の欄において「処理費用は工事積算基準(国土交通省)等により算出」と説明している。工事積算基準(国土交通省)とは国土交通省大臣官房官庁営繕部監修の「公共建築工事の積算基準」(平成27年版)を言う。この基準は国の機関が発注する建築工事の積算に関する国の「統一基準」である。(以下本件「工事積算基準(国土交通省)」という)
今回、国の認定したゴミの総量(19520トン)の有無について、告発人らは根本的な疑義を有して、それを前提に告発をしているが、仮にその総量があったとして、本件「工事積算基準(国土交通省)」により積算したところ、金4億3572万3684円が「適正」金額であり金3億8401万8263円を「過大に水増し」していることが判明した。
近畿財務局の水増し積算を本件「工事積算基準(国土交通省)」と比較すると
第1 「直接工事費」(Aという)のうち「処分費」を著しく「水増し」している。
近畿財務局の積算ではゴミの総量は合計19520tであり、トン単価2万2500円で積算している。19520t×2万2500円=4億3920万円と計算している。他方、本件「工事積算基準(国土交通省)」の基準で積算するとトン単価は1万3932円である。19520t×1万3932円=2億7195万2640円となる。「処分費」だけでも4億3920万円-2億7195万2640円=1億6724万7360円が水増し金額になっている。なお本件「工事積算基準(国土交通省)」では地中埋設物の処分費は「市場単価」を適用するとなっている。国、自治体の建築工事の積算時の「市場単価」は勝手に国の省庁や自治体では適当に「市場単価」を決めるのでなく、「建設物価」(物価本と呼ばれている)により市場単価を調査することになっている。(ちなみに「建設物価」本は建設工事で使用する各種資機材の価格や工事費、賃貸料金等を全国の各都市で毎月調査し、その結果を収録している総合物価版である)。建設物価本によるとトン単価が1万3932円である。
ちなみに「平成23年度 大阪国際空港場外用地((OA301)土壌汚染深度方向調査業務・報告書平成24年2月 大阪航空用地部補償課・阪神測建株式会社)」(甲3)によればトン単価12,300円であるのと対比すると今回の2万2500円が如何に高いか判明する。
また近畿財務局の積算では「埋め戻し費用」も単価を3781円と計算しているが、平野鑑定士は金3000円と積算しているのでこの積算も違ってくる。
以上の結果、「直接工事費」(A)は金3億3828万7440円が「適正」であり、金1億7591万6460円も過大に積算している。
第⒉ 「間接工事費」「一般管理費」についても「工事積算基準(国土交通省)」によって積算していない。
(1)「間接工事費」についての過大計上
○「共通仮設費」(以下Bという)はAの6.99%で積算しているが、国土交通省の基準では2.92%である。
○「現場管理費」(以下Cという)はA+Bの合計金顎の24.74%を計上している。国土交通の積算基準だと6.14%である。
〇「共通仮設費」「現場管理費」の数値を調整することにより大幅に過大計上をしている。
(2)「一般管理費」(以下Dという)もA+B+Cの合計の10.6%で計算しているが、国土交通省の積算基準では9.41%である。
⒉ 何故「工事積算基準(国土交通省)」によるべきか
本件土地の譲渡は会計法、予算会計令により随意契約によって売買している。随意契約であっても 予決令第99条の5により「 契約担当官等は、随意契約によろうとするときは、あらかじめ第80条の規定に準じて予定価格を定めなければならない」と定められ、予定価格は80条2項において「契約の目的となる物件又は役務について、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮して適正に定めなければならない」とある。これを具体化したのが「工事積算基準(国土交通省)」である。この基準は平成15年3月20日、官庁営繕関係基準等の統一化に関する関係省庁連絡会議において、「公共建築工事積算基準」の当統一基準として決定されている。「公共建築工事積算基準」第1条の「目的」において「本基準は、公共建築工事を請負施工に付す場合において、予定価格のもととなる工事費内訳書に計上すべき当該工事の工事費(以下「工事費」という。)の積算について必要な事項を定め、もって工事費の適正な積算に資することを目的とする」と定めている通り工事の積算の基準となるべきものである。
以上の通り 近畿財務局(大阪航空局)の本件内訳書の地中埋設物の撤去費用の積算も本件「工事積算基準(国土交通省)」によらねばならない。甲1号証の「処理費用算出根拠」の欄において「処理費用は工事積算基準(国土交通省)等により算出」と説明しているのはこのためである。
3 何故このように近畿財務局が国が自ら定めた積算基準に大幅に逸脱する「恣意的」積算を行ったのか。
この真相を解明するのは検察庁の役割である。しかし最近の報道によると次のような報道がなされている。
ア NHKの報道によれば、
〇 2016年3月24日に、財務局と森友学園の協議が行われ、その協議の場で籠池泰典森友学園理事長(当時)の代理人弁護士が財務局に国有地の買取りを初めて打診した。
〇 その際、財務局の担当者は「いくらまでなら支払えるか」と森友学園側に購入可能な金額の上限を尋ねたところ、籠池氏の代理人弁護士は、財務状況から1億6000万円と答えた。
〇 すると、財務局の担当者は、国が土壌工事で約1億3200万円を負担する予定だとして、これを上回る金額が必要だと説明した。
〇 この協議からの6日後の3月30日、異例にも財務局は国有地のゴミの撤去費用の見積もりを この交渉に立ち会っていた大阪航空局の職員にゴミの量と価格を依頼した。
4月14日、大阪航空局が近畿財務局に追加の地下埋蔵物撤去費用8億1974万1947円の見積もりを提出し、これにより売却額が1億3400万円となった。
と報道された。
イ 関西テレビの報道によれば
○2016年5月中旬から下旬の近畿財務局池田靖国有財産統括官(当時)が籠池氏側に以下のように発言していたことが明らかになった。
〇「だから、われわれの見込んでいる金額よりも、(撤去費が)少なくてもわれわれは何も言わない。」
〇「理事長がおっしゃられる『0円に近い』というのが、どういうふうにお考えになられているのか、売り払い価格が0円ということなのかなとは思いますけど、私ども、以前からちょっと申し上げているのは、『有益費』の1億3000万円という数字を国費として払っているので」、「その分の金額くらいは、少なくとも、売り払い価格は出てくると、そこは何とかご理解いただきたい。」
〇「理事長がおっしゃる0円に近い金額まで、わたしは、できるだけ努力する作業を今やっています。だけど1億3000万円を下回る金額にはなりません。」
ウ 菅野完氏が公表した録音によれば
「池田」氏(近畿財務局職員)は、
>僕はあの~、合致する金額をご提示したいと思ってるだけです。
と明確に述べている。
その前後のやり取りを見ると、「合致する金額」とは有益費の1億⒊千万円を上まわる価格と森友学園の出せる金額の1億6千万の間で「双方が合致する金額」であることになる。
この交渉経過を見ると、国の積算基準に基づき予定価格を積算するというのではなく、森友学園の「支払可能金顎=1億6千万円」と国が支払った有益費の1億3千万円との間で「恣意的に」積算しただけといえる。
4 被告発人らの積算は国土交通省の積算基準ではなく、「恣意的な基準」で積算している事実、及び最近の報道によって明らかになった事実と背任罪の構成要件の関係
(1) 被告発人らは本件「工事積算基準(国土交通省)」によって直接工事費の「処分費」についてトン当たり1万3932円で積算すべきところ金2万2500円で積算している事実、現場管理費も直接工事費(A)+共通経費(B)の合計金顎に6.14%を乗じて積算すべきところ24.74%を乗じて算定している事実等は国(背任罪の本人)の爲に積算すべき任務に違背する行為である。
同時に本件「工事積算基準(国土交通省)」ではなく「恣意的な基準」で積算すれば森友学園を優遇し、国(背任罪の本人)に損害を与えることが容易に判明する。しかし被告発人らは、それを承知の上で「処分費」「現場管理費」等を「恣意的な基準」で積算した結果、「森友学園への図利」及び「国(背任罪の本人)への損害=加害目的」も有していたことになる。
(⒉)NHKの報道の報道によれば 地下埋設物の撤去費用の見積もりをする (4月14日) 前に、国有地の売却価格に関する交渉を行っており、森友学園の支払可能金顎(1億6千万円)を聞き出し、他方では関西テレビなどの報道によれば、更地価格の鑑定(5月31日)前に、先ず有益費1億3千万円余を下限とした価格の間で「事前にすりあわせをした合意価格に見合うよう」に交渉をなしている。この経過が示す事実は国の爲に更地価格、地中埋設物撤去費用を適正に積算をしているのでなく、恣意的に1億6千万円余と1億3千万円余との間で「調整」して売買金顎を決めたに過ぎない。更地価格を9億5600万円、地下埋設物の撤去費用を8億1974万1947円としてその調整価格が1億3400万と算定していれば、「適正な対価なくしてこれを譲渡し・・てはならない。」(財政法9条第1項)にも違反する。
(3) 価格の交渉過程で、森友学園側から、国家賠償請求を示唆する発言が籠池氏側からなされたので、図利加害目的の認定が困難との報道も見受けられる。(このような報道があることは、被告発人らは検察庁にそのような逃げの説明=国(背任罪の本人)の爲になしたという弁明をしている可能性を推認される)
しかしながら、国家賠償の請求が買主側から示唆する発言が仮にあったので国家賠償をされるリスクを考量して撤去費用を8億円余と積算する根拠にはなり得ない。それなら例えば国の積算基準での撤去費用は4億円余であったが、国家賠償をされるリスク(敗訴の可能性)を考量して金4億円余を更地価格から控除して、最終譲渡代金を金1億3400万に減額したという説明がなされるべきである。もちろん国家賠償リスク(敗訴の可能性)を4億円余と説明する合理的な検討が近畿財務局、大阪航空局内で客観的にかつ真摯に検討した事実がなければならない。そのような客観的にかつ真摯な検討事実がなく、単に、国家賠償のリスクの弁明は被告発人らの任務違背の故意をごまかす論理であり「自己若しくは第三者の利益を図る目的」(図利加害目的)があったことを隠蔽する弁明にしか過ぎない。 むしろ被告発人らが、国家賠償リスクをそれほど強調するなら、森友学園との当初からの賃貸契約の交渉、有益費用(1億3千万余)の支払など異例にも森友学園の言うままに優遇している事実等や安倍総理夫人の安倍昭恵介入問題が、公開の法廷で明らかになること、言わば被告発人らの「政権の擁護」や「失態」の国民への開示を恐れた「自己保身」以外の何ものでもないと考えらる。
図利目的は、財産上の利益のみならず、自己の社会的地位、信用等を保全・維持することなど身分上の利益も含まれるとするのが判例である(大判大3.10.16録20-1867)。自己又は第三者の利益を図る目的と本人の利益を図る目的と併存する場合には、目的の主従により本罪の成否が決せられることになる(最判昭和29.11.5集8-11-1675、最決昭和35.8.12集14-10-1360)。その目的がなければ、当該行為に出なかったようなものが主たる目的と認められるが、本人の利益を図る目的が決定的な動機ではない場合には、本罪の図利目的を認めうる(最決平成10.11.25集52-8-570)と告発状に記載した通りである。
5 仮処分手続きにおける裁判所からの打診に対しても国は 関係証拠の保全に対して極めて非協力的な姿勢であり、このままで任意捜査をしても真実の証拠が御庁に提出される可能性が極めて薄い。
本件に関連して,告発人の1人である上脇博之(神戸学院大学法学部教授)大阪地方裁判所に、森友学園及び森友学園以外の者と近畿財務局との面談交渉記録の廃棄・改ざん等の禁止を求める仮処分を申立している(大阪地裁・平成29年(行ク)第87号)。 6月27日の審尋期日(第1回)に異例なことではあるが,裁判所より,「局長通知等により,これらの記録の廃棄等取扱について慎重にするよう通知などが出せないか。また,そのような担保があれば債権者(上脇博之)としても取り下げを検討できないか」との打診があった。
ところが国は,7月の審尋期日(第2回)「近畿財務局において平成29年1月1日から平成32年12月31日までに基盤システムの更新を行う予定はない」との回答は行ったものの,「記録の廃棄等に関する裁判所の提案」についてはこれを明確に拒否した。そもそも,債権者が本件申立を行わなくとも,また裁判所からの打診が無くても、国は,刑事事件で告発され又債権者から情報公開請求を受けている記録である以上、今後これらの記録の廃棄を行わないことを本来なら明言すべきであるがそれを拒否したことは関係する記録を廃棄、隠匿する可能性が極めて高いことを自ら認めたものである。このため,現時点で保存されている関係記録並びに各職員のPC等に残されている可能性のある面談交渉記録についても職員の任意の判断で消去・廃棄される可能性は否定できない。
これらの証拠は捜査にとっても必要不可欠の証拠であり真相解明の爲にも絶対に必要な資料である。
従って,迅速に強制捜査を行わなければ,職員らへの「任意捜査」では、これらの,重要な証拠が御庁に提出されない可能性がありさらには、隠匿、廃棄される恐れがある。森友学園に対して行ったと同様に近畿財務局に対しても関係する証拠を捜索、押収する為の強制捜査(なおパソコン内の文書が「削除」「消去」されていても、デジタルフォレンジック調査を実施するなど)して真相の解明を求めるものある。
証 拠 書 類
甲12号証 平野憲司鑑定意見書及びその添付資料
甲13号証 仮処分、及び本訴で近畿財務局に開示を求めている行政
文書明細