愚策だったアベノマスク事業の開示文書を分析しました(その2)

いわゆるアベノマスクの単価訴訟で勝訴した結果、厚生労働省と文部科学省の関係文書が単価等を含め開示されたので、原告・弁護団は、その開示文書を分析して、今月(2023年4月)24日、大阪地裁の司法記者クラブで記者会見して分析結果を公表しました。その一部については、下記のブログ記事で紹介しました。

愚策だったアベノマスク事業の開示文書を分析しました(その1)

上記記事では、主に単価などの数字に着目して紹介しましたが、原告・弁護団が解明しようとしているのは、それだけではありません。もっと重要な業者選定経過・交渉経緯を明らかにしようとしており、また、もう一つの訴訟である契約締結経過文書訴訟はまだ係争中なので、今回は、それらについて以下ご紹介いたします。

■業者選定経過・交渉経過について

・公文書管理法第4条は「当該行政機関における経緯も含めた意思決定に係る過程並びに当該行政機関の事務及び事業の実績を合理的に跡づけ又は検証することができるよう」文書の作成を義務付けています。

・公文書管理法第10条に基づき定められた厚労省や文科省の文書管理規則では、「契約に至る過程が記録された文書」(例として仕様書案、協議調整経緯)を作成保存することが挙げられていいます。

契約締結経過文書訴訟において、国が厚労省(合同マスクチーム)や文科省において調達に関し作成した公文書として存在を認めているものは、契約書等を除くと、業者とのメール、配付スケジュール、調達管理表、変更理由書のみなのです。

*2020年(令和2年)3月末ころ、興和やユースビオが合同マスクチームに出向いていることが明らかになっているのですが、国は、応接録(交渉文書)は存在しない、というのです。

*「変更理由書」のうち興和の変更契約の変更理由書はない、というのです。

・メールについて、国の主張は、「個々の職員の判断で『1年未満文書』として、その都度廃棄していた」、「情報公開請求をした際に共有フォルダや個別のメールを探索したが、残っていなかった」というのです。

★結局、業者選定の経過や交渉経過については、メール以外、そもそも作成していなかったということになっているわけです。しかし、このような巨額の支出、しかも緊急調達として随意契約になっているものについて、公文書とし記録を付け後で国民が政策の是非や多額の税金の使途について検証ができる(そして将来の政策に活かす)ようにしておかなければならないのではないか!!!

◆業者とのメールについ

・原告の情報公開請求に対して、厚労省は「作成しておらず保有していない」として不存在決定しました。

・契約締結経過文書訴訟での国の当初の主張:「やりとり文書」として、調達業者との電子メールが存在したがメールを「1年未満文書」としていたため、その都度廃棄した(情報公開請求のときに「作成しておらず」は記載の誤りだった)。情報公開請求が出た際に検索したが、廃棄され残っていなかった。

・原告らが2021年12月16日に、業者に対する文書送付嘱託の申立をしたところ、裁判所が2022年1月14日に採用しました。2022年2月以降企業数社が国と送受信したメール及び添付文書を裁判所に送付しました。

・2022年3月22日第5回期日、国は「送付嘱託結果を受けて再調査・再検討」。半年以上経過後、その結果、2022年7月14日第7回期日で「請求書や誓約書等の紙文書や厚労省職員2名のパソコンからメール100通以上が発見」された!

→しかし、2022年11月17日第9回期日で突然、今回の原告の開示請求対象文書は「組織としての意思表示、意思決定が記載」、「契約締結から納品までの実質的な過程が分かる文書」と(限定的に)解釈したとの主張を行い、上記紙文書、メール等はいずれも請求対象文書には該当しない(そのため開示決定はしない)、国が「不存在」として不開示決定をしたことに違法はないとの主張を行うに至った。

*ころころと国の主張が変わり、開示しないという結論ありきのその場しのぎの対応を繰り返しているのです。

なお、アベノマスクの調達業者とのメールの廃棄問題については、フリーの赤澤竜也さんの記事が分かり易いので、アクセスしてお読みください。

第2次アベノマスク裁判。「調達業者との電子メールを随時廃棄していた」

以 上

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